医院コラム

小さな破折線が引き起こす大きな痛み:定期検診が守った歯

治療前後「右下の奥歯が冷たい物にものすごくしみて、噛んでも痛いです」と、50代の男性Kさんが来院されました。お口の中を診ると、右下の一番奥の歯(第二大臼歯)には大きな詰め物(インレー)が入っていました。奥歯を1本ずつガーゼで噛んでいただくと、痛みを感じたのはその第二大臼歯でした。レントゲンで詳しく確認すると、虫歯や歯周病の進行は見られませんでしたが、インレーの下にはセメントがたくさん詰められていました。

Kさんに状況を説明し、このような場合は歯が破折している可能性があることをお伝えしたうえで、大きなインレーを外してみることにしました。すると、肉眼では確認しづらいほど細い破折線が拡大鏡で確認できました。その破折線が神経と血管のある場所まで達していたため痛みが出ていたと考えられ、神経を取り除く根管治療を行いました。

2回目の来院時、Kさんは「痛みが全くなくなってとても楽になりました。ありがとうございます」とおっしゃっていました。歯が破折している場合でも、大きく割れていれば保存できず抜歯が必要になりますが、小さな破折線であれば抜かずに残せるケースも多くあります。今回は破折が小さく、早めに受診されたことで保存が可能でした。もし放置されていたら、割れが広がり保存不可能になっていたと思われます。

Kさんは14年間、定期検診を欠かさず受診されていたため、「今回は冷たいものへの反応がいつもと違う」と気づけたのでしょう。破折が確認された歯は、最終的に全体を覆う被せ物(クラウン)で保護することが必要ですので、Kさんも根管治療後にクラウンを装着する予定です。

人生100年時代。いつまでもおいしく何でも食べて、楽しく前向きに生きることは、健康に長生きするための大切な要素です。大きな被せ物や詰め物をしている歯が冷たいもの・熱いものにしみる、噛むと痛むなど、お口のお悩みがあれば、お気軽にご相談ください!

(なしき歯科医院新聞 2025年11月号より)

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